人財育成で注目されている自己理解の重要性

皆さんは「自己理解」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
近年、企業における人財育成のキーワードとして、注目が集まってきた言葉です。

なぜ自己理解が企業の人財育成で注目を受けているのか…。
今回は、企業の人財育成の中における自己理解の重要性についてご紹介いたします。

人財育成で注目されている自己理解とは?

『自己理解』
読んでそのごとく、自分を理解すること、ですが、近年、この「自己理解」が企業の人財育成の中で注目されています。

そもそも、企業の人財育成における「自己理解」とは何なのでしょうか?
明確な定義は存在しないようですが、概ね人財育成の中で使われる自己理解には、「自分について“正しく”理解する」という意味があるようです。

似た言葉に「自己認識力」というのがありますが、使われ方としてはほぼほぼ同じ意味合いのようです。
自己認識力については、「自分について明確に認識する力」と定義されており、自己認識力について長年研究をしているアメリカの心理学者、ターシャ・ユーリック氏の研究によると、自分について明確に認識している人は、

  • より自信があり、より創造的
  • より適切な判断を下し、より強い人間関係を築き、コミュニケーション能力も高い
  • 嘘をついたり、騙したり、盗んだりする可能性が低い
  • 仕事のパフォーマンスが優れ、昇進しやすい
  • より有能なリーダーであり、その部下の満足度は高く、会社の収益向上にも貢献している

というデータが出ているそうです。

つまり、自己認識力がある人はより正確に状況を把握し、適切な判断を下せるので、仕事のパフォーマンスが高い傾向があり、また、自己認識力が高いことにより、ありたい姿を軸に仕事に取り組める為、時代や環境に大きな影響を受けず、自分の能力を自分自身で高めていくことができるのです。
自己理解においても、これと同様の傾向があると考えてよさそうです。

自己理解という言葉が人財育成で出てくる際、企業は社員に対して、自分への理解を深め、キャリアの自律や自己成長、仕事のパフォーマンス向上、組織に対するエンゲージメントの向上につなげていってほしいと考えているニュアンスがあります。

人財育成で注目されている自己理解で気を付けなければいけないこと

自己理解をキーワードに人財育成に取り組む際は、気を付けなければいけないことがあります。
それは、「自己理解とは、自分が知っている自分、自分がわかっている自分だけを指すわけではない」ということです。これを意識しなかった場合、ずいぶんと利己的な使われ方をしてしまいます。

前述のターシャ・ユーリック氏の研究によると、「95%の人は自分のことを明確に認識できていると思っているが、実際に正しく自己認識できている人は10~15%程度」という統計があるそうです。

つまり、ほとんどの人が、自分のことを、「自分はこういう人間だ」「こういう価値観がありこういう好き嫌いがある」「これは得意でこれは苦手」とわかったつもりになっているということになります。
もちろん、自分が考えている自分も、自己なので、それらを完全に否定するつもりはありません。

しかし、多くの場合、自分を客観的に評価できなかったり、他人に評価されている部分を大したことないと気に留めなかったりしており、自分のすべての側面を正確に自分で見ているということはありません。
多くの人が、自分の一面を自分のすべてだと誤解しているのです。

だからこそ、自己理解に取り組む必要があるのですが、この時に「自分のことは自分が一番よくわかっている」と誤解したまま取り組むと、バイアスがかかり、自己理解は深まりません。

なので、自己理解は、「自分が知っている自分、自分がわかっている自分だけを指すわけではない」ということを押さえ、新たな自分に気づいてもらう必要があるのです。

このことをわかりやすく示している有名なものが、「ジョハリの窓」です。
ジョハリの窓は、自分のことを、「自分が知っているか、知らないか」「他人が知っているか、知らないか」の2軸で表したマトリクスです。

自分が知っている自分が知らない
他人が知っている開放の窓盲点の窓
他人が知らない秘密の窓未知の窓

人は色々な側面を持ち合わせています。
仕事中の自分と、プライベートな自分が違う、という人もいるかもしれません。あるいは変わらない、という人もいるでしょう。

いずれの場合も、多くの人は、自分のすべてを他人に見せていない、自分の隠している一面がある、という部分があります。それが、自分が知っていて、他人が知らない自分、秘密の窓です。

そして、自分が知っていて他人が知らない自分があるのと同様に、実は自分が知らなくて他人は知っているという自分、盲点の窓が存在しています。

自己理解や自己認識力では、自分が知っている自分だけでなく、自分が知らない自分も探しに行くということが必要になるのです。

人財育成で注目されている自己理解が重要な理由

最後に、なぜ自己理解が重要なのかについて、ご紹介したいと思います。

「彼を知り、己を知れば百戦危うからず」とは孫子の言葉ですが、どんな場面でも、パフォーマンスを発揮し、成果を出す(百戦危うからずの)ためには、彼(周囲)と己を良く知らなければいけません。

例えば、業界分析を行う際、競合他社や市場環境についてだけでなく、自社のこともしっかり分析します。3C分析などは良い例です。

そして、業界の中で、何かしらの戦略を立てるとしても、自社の強みや弱み、リソースなどをきちんと把握しておかなければ、チャンスを見出すことは困難です。

これと同様に、自分の強みや弱み、価値観や行動の傾向、性格などを正しく理解していなければ、どのように働くか、どのように仕事を進めるか、百戦危うからずな状態でいくことは困難となります。

近年はタレントマネジメントの考え方も一般的となり、適材適所が重視されるようになりました。
企業側が持っている社員の情報、企業が抱いている社員への認識、これらを知ることも、自己理解の一環です。

いくらタレントマネジメントで「こういう評価が出ている」というのがあったとしても、「いや、これは私の知っている私ではないから、誤解されている!」と正しい自己理解が行えていなければ、せっかくのタレントマネジメントもキャリアアップにつなげることができませんし、配置にも活かせません。

また、近年はリスキリングなどが流行り、自己成長もよく言われるようになりました。

自己成長も、自分は何ができていて何ができていないのか、これから何が必要になってくるのかなど、自分を正しく理解していなければ、違う方向への努力ばかりが募り、なかなか成果が上がらないでしょう。

こうした企業における様々な人事施策をより効果的に機能させるためにも、社員が社員自身のことを、正しく理解しているという状態が求められるようになってきたのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は人財育成で注目を集めている「自己理解」についてご紹介してまいりました。

多くの人は正しく自分を理解できていないこと、そして、現代では様々な人事施策をより効果的に機能させるためにも自分について正しく理解しているという状態が求められるようになっていることを意識しながら、ぜひ人財育成に自己理解の概念を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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