企業が成果を上げ、存続していくためには、優秀な人材の育成が不可欠です。ところが、いざ優秀な人材を育成していこうと思っても、なかなか思うようにいかないのが人財育成。
そもそも優秀な人材とはどういう人材なのか。どうしたら優秀になるのか。人財育成の悩みは尽きません。
今回は、企業が人財育成を行う際にものさしとなるITスキル標準(ITSS)の中から、ITアーキテクトの育成について、ご紹介いたします。
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人財育成のものさしとなるITSSにあるITアーキテクトの役割とは?
ITスキル標準(ITSS)とは、ITに関するサービスを提供する際に必要とされる能力を明確化、体系化した指標、つまり、ものさしです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のサイトによると、
「ITスキル標準(ITSS)とは、IT関連のサービス提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標であり、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするものです。」とあります。
企業において、優秀な人財を育成しようとする際、どういう人材を育成していくのか、「優秀な人財」を定義するところから始めていかなければなりません。
そうした際に、こうしたものさしが活用できるのです。
では、ITSSに記載されているITアーキテクトとは、どのような役割を担った人材なのでしょうか?
ITSSには下記のように記されています。
「ビジネス及びIT上の課題を分析し、ソリューションを構成する情報システム化要件として再構成する。ハードウェア、ソフトウェア関連技術(アプリケーション関連技術、メソドロジ)を活用し、顧客のビジネス戦略を実現するために情報システム全体の品質(整合性、一貫性等)を保ったITアーキテクチャを設計する。設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成することを確認するとともに、後続の開発、導入が可能であることを確認する。また、ソリューションを構成するために情報システムが満たすべき基準を明らかにする。さらに実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する。IT投資の局面においては、戦略的情報化企画(課題整理と分析(ビジネス及びIT)、ソリューション設計(構造とパターン))を主な活動領域として以下を実施する。」
つまり、ITに関するソリューションを提供する際に、ビジネス上の課題やITの課題を分析し、情報システムの全体を設計するという役割を担っている人を、ITアーキテクトと定義しているのです。
具体的にどのようなタスクや業務があるか、気になる方は、iCD協会が公開しているタスクディクショナリで知ることができます。
いくつか抜粋すると、ITアーキテクトのタスクには下記のようなものがあります。
・システム企画立案
・システム要件定義・方式設計
・標準の策定・維持・管理
・新ビジネス、新技術の調査・分析と技術支援
こうした業務を行うのがITアーキテクトになのです。なお、ITアーキテクトには、「アプリケーションアーキテクチャ」、「インテグレーションアーキテクチャ」、「インフラストラクチャアーキテクチャ」の3つの専門領域に区分されています。
詳しくはぜひITSSのITアーキテクトの項目をご確認ください。
では、ITアーキテクトにはどんな能力が必要なのでしょうか。iCD協会が公開しているスキルディクショナリによると、主に下記のようなスキルが必要なようです。
システム戦略立案手法 | システム企画立案手法 | 要求分析手法 |
非機能要件設計手法 | アーキテクチャ設計手法 | 品質マネジメント手法 |
標準化・再利用手法 | チェンジマネジメント手法 | システムアーキテクティング技術 |
こうした手法や技術を知識として身に着け、実際に使えるように定着させていくことが、ITアーキテクトには必要になるのです。
人財育成のものさしとなるITSSにあるITアーキテクト育成のポイントとは
ここまで、ITアーキテクトの役割や、必要となるスキルについて確認してきました。
ITアーキテクトに必要な知識やスキルを身に着け、ITアーキテクトの役割をまっとうできる人財を育成していくためには、どのようなことを意識したらいいのでしょうか?
ITアーキテクトは、ビジネスやITの広い視点から課題を分析し、システムで解決していくことが求められるので、広い視野と実務的なITスキルが求められます。
そのため、下記ポイントを意識するといいでしょう。
- 研修で体系立てた知識や技術を学ぶ
知識や技術を学ぶにあたって、研修で一般的に体系立てられた内容をきちんと学ぶことをお勧めします。もちろん、現場で実際に手を動かしながら学ぶのもよいですが、現場では現場特有のルールや、使われる知識・技術の偏りがあることがあります。
ITアーキテクトは、広い視野が求められるので、現場の偏った知識や技術だけでなく、一般的に体系立てられた知識や技術も必要になるのです。
- コミュニティを形成する
ITアーキテクトは広い視野が必要になります。そのため、幅広い事例を、継続的に取得できる環境づくりが大切になります。同じITアーキテクトで交流できるようなコミュニティを社内外で作ったり、すでにあるコミュニティに参加したりすることをお勧めします。
- 資格試験やアセスメントの活用
ITSSは人財育成のものさしとして活用することができます。世の中には、ITSSに基づいたアセスメントが数多く存在していますので、こうしたアセスメントを活用してITアーキテクトとしての現在地を確認するといいかもしれません。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が提供しているシステムアーキテクト(SA)試験というのもあります。こうした客観的な指標を活用し、ITアーキテクトとしての専門性と能力を測ることをお勧めします。
人材育成のものさしとなるITSSにあるITアーキテクトを育成する研修
最後に、ITアーキテクトを育成する研修の構成例をご紹介します。ITアーキテクトを育成する研修を企画する際の参考にしてみてください。
ITアーキテクトを育成する研修 基礎編
ITアーキテクチャの基本 | ITアーキテクチャの役割と重要性 |
アーキテクチャフレームワークの概要 | システム設計の基礎 |
アーキテクチャの種類と特徴 | システム開発ライフサイクル |
要件定義とモデリング | 設計原則とパターン |
テクノロジーの基礎 | 最新のテクノロジートレンド |
クラウドコンピューティングと仮想化 |
ITアーキテクトを育成する研修 応用編
アーキテクチャ設計技法 | 複雑なシステムのアーキテクチャ設計 |
パフォーマンスとスケーラビリティの考慮 | セキュリティとリスク管理 |
プロジェクトマネジメント | ITプロジェクトの計画と実行 |
リソースとスケジュール管理 | コスト管理と品質保証 |
ビジネススキル | ビジネスプロセスとIT戦略 |
コミュニケーションとリーダーシップ | ネゴシエーションと意思決定 |
ケーススタディ | 実際のプロジェクト事例の分析 |
アーキテクチャの問題解決アプローチ |
以上のような研修で体系立てられた知識・スキルの習得を図るとともに、懇親会、あるいは研修が終わっても継続的な勉強会の開催などで、コミュニティを形成しながら、ITアーキテクトを育成していきます。
まとめ
いかがでしたか。
今回は人財育成のものさしとなる、ITSSの中から、ITアーキテクトの育成についてご紹介してまいりました。ITアーキテクトは、その役割から、広い視野と実務的なITスキルを身に着けることが求められます。
広い視野、実務的なITスキルをしっかり身につけられる人財育成の企画に、ぜひチャレンジしてみてください。
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